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ここぞという時



子供が危険なことをした場合や、人に迷惑や危害を与えた場合、親は躾として子供を叱ることが必要でしょう。


Aさんが子供の頃、公共の場でいたずらをすると父親に叱られることが度々ありました。そこで「自分は親になったら、あまり叱らない大人になりたい」と思っていました。


ところが、親になったAさんは、わが子が急に道路に飛び出したり、公共の乗り物の中で騒いだりした時、厳しく叱っていたのです。些細なことも「ここぞ」という時は叱る必要性をAさんは、実感するようになったといいます。


振り返ってみると、〈父親も必要に応じて自分のために叱ってくれていたんだ〉ということに思い至ったのです。


自分が親になってから、Aさんは改めて父からの愛情の深さに気づかされました。子供に対して、お互いを認め合う関係を保ちながら叱る時は叱り、共に成長していけるよう日々過ごしていきたいものです。



今日の心がけ◆親への感謝を深めましょう

                                                                                (出典:職場の教養 2023年6月号)




■経営者からの感想

このエピソードからわかることは、'叱る'行為は必ずしも否定的なものではなく、その背後には愛情と教育の意志が存在するということです。しかし、叱る行為は不適切な行動を指摘し、改善を促すものであり、時として強い感情、すなわち怒りを伴います。怒りはしばしば自分の恐れから生まれます。これは相手に対して恐怖や反抗心を引き起こす可能性があり、現代においてはあまり効果的なコミュニケーション手段とは言えません。


現代社会では、「叱る」よりも「フィードバック」がより効果的です。「フィードバック」は行動に対する事実の提示(ティーチング)と立て直しのサポート(コーチング)の二つの機能があります。フィードバックは怒りの感情を伴わず、より客観的で建設的なコミュニケーションとなります。


彼は子供時代に叱られる経験を通じて、そして現状の自身の子供に対する接し方から親からの愛情と教育の意志を理解しました。しかし、彼はまだ「フィードバック」の方が「叱る」よりも効果的であるという点に気づいていません。


このエピソードは私たちビジネスリーダーにも重要な教訓を提供しています。チームメンバーや部下への「叱る」ことも時にやむを得ない場合もあるかもしれませんが、その根底には常に成長を促す愛情と教育の意志が存在するべきです。そしてそのためには、より積極的に「フィードバック」の手法を活用することが重要となります。


しかし、我々は時として「叱る」行為に頼ってしまいます。その背後には、「早期に成果を上げなければならない」という恐れや焦りが潜んでいるのではないでしょうか。


私たちは常にメンバーの行動を観察し、フィードバックとサポートを通じてメンバーの成果創出と成長支援の両方を促進しつつ、叱ることによる短期的な結果とフィードバックによる長期的な成長のバランスをとることが求められています。これは家庭での子供に対する接し方だけでなく、職場での部下やメンバーに対する接し方、そして自分自身に対しても同じです。


したがって、これからも自分自身と他者の成長を促すために、どのような状況でも冷静に考え、適切な行動をとることが求められます。それが現代のリーダーシップの発揮の仕方であり、一緒に働く人々を理想の姿へとリードするあり方となります。


さらに、フィードバックを提供する際には、感情を制御し、適切に伝えることが重要です。フィードバックが恐れや不安を引き起こさないようにするためには、具体的な行動に対する指摘(情報通知)を行い、その行動がどのような結果をもたらしているのか、あるいはもたらす危険性があるのかを明確に示すことが必要です。その上で、その行動を改善するための施策を考える機会を提供することで、受け手は指摘を受け入れやすくなります。


ともに成長を続けるために、子供やメンバーの行動をよく観察し、効果的にフィードバックを行うことを習慣化させましょう。その日々のの積み重ねが、あなたのリーダーシップを磨き、共に働く人々の成長と組織全体の成果創出につながります。


今日のエピソードを踏まえたおすすめの書籍をご紹介します。


「フィードバック入門」 中原淳著


この書籍では、中原淳氏が「フィードバック」の仕組みと方法を分かりやすく提供しています。フィードバックとは何か、どのように効果的に実施するか、そしてそれが個々の成長と組織全体の発展にどのように貢献するかについて詳しく述べています。コミュニケーションを効果的に行いたいと考えているリーダーやマネージャーにとって、とても役立つ一冊です。

「1on1ミーティング 「対話の質」が組織の強さを決める」本間浩輔・吉澤幸太著


「1on1ミーティング」は、マネージャーとメンバー間の1対1の面談をいかに効果的に行うかについて詳しく述べた書籍です。そして、1on1ミーティングが個々の従業員の成長、組織全体の生産性向上、そしてより良い職場環境の創出にどのように貢献するかを解説しています。リーダーシップスキルを磨き、従業員の能力を最大限に引き出したいマネージャーやリーダーにとって、この書籍は必読です。


「GREAT BOSS(グレートボス) シリコンバレー式ずけずけ言う力」キム・スコット著


この本は、リーダーがメンバーに対するフィードバックを提供する効果的な方法について具体的な手法を提供しています。そして、キム・スコットは「徹底的なホンネ」文化を築き上げることの重要性と、そのためには「心から相手を気にかける」ことと合わせて「いいにくいことをスバリと言う」ことを仕組み化させることであると、シリコンバレーでの経験を踏まえて説いています。